【例文20選】「おこがましい」の意味と正しい使い方|類語との違いや返し方も解説

「おこがましいとは存じますが…」

ビジネスシーンで、特に目上の方に対して何かを伝える際に使われる「おこがましい」という言葉。なんとなく「へりくだった表現」だと分かってはいるものの、正確な意味や適切な使い方に自信がない方も多いのではないでしょうか?

実は「おこがましい」は、単なる謙遜の言葉ではなく、相手への敬意を示し、円滑なコミュニケーションを実現するための非常に便利な言葉です。しかし、使い方を間違えると、かえって失礼な印象を与えたり、自信がないように見えたりすることも。

この記事では、「おこがましい」の基本的な意味から、ビジネスでそのまま使えるシーン別の豊富な例文、間違いやすい類語との違い、さらには言われたときの正しい返し方まで、どこよりも分かりやすく徹底解説します。

「おこがましい」とは?意味を分かりやすく解説

「おこがましい」とは、「自分の立場や能力をわきまえていない、出過ぎている、生意気だ」 という意味の言葉です。自分の言動が、相手の立場や状況から見て「身の程知らず」であると自覚し、それをへりくだって表現する際に使います。

もともとは古語の「痴がましい(をこがましい)」から来ており、「ばかげている・みっともない」という意味合いも持っています。この「みっともない」というニュアンスが根底にあるため、現代でも「身の程知らずで恥ずかしいのですが…」という深い謙遜の気持ちを表すことができます。

ポイントは、相手を批判するためではなく、主に自分の言動に対して使う「自己卑下」の言葉であるという点です。これをクッション言葉として文頭に置くことで、相手への配慮を示し、その後の発言を柔らかく伝える効果があります。

【シーン別】「おこがましい」の正しい使い方・例文20選 🙇‍♂️

ビジネスシーンで「おこがましい」が特に役立つのは、目上の方に対して、本来なら言いにくい「お願い」「意見」「反論」などを伝える場面です。具体的な使い方を例文でマスターしましょう。

1. 依頼・お願いをするとき

相手に手間や負担をかけるお願いをする際に、申し訳ない気持ちを込めて使います。

  • おこがましいお願いで大変恐縮ですが、こちらの企画書にご目通しいただけますでしょうか。
  • おこがましいとは存じますが、プロジェクトのリーダーにご推薦いただけないでしょうか。
  • おこがましいお願いとは承知の上で、〇〇様へのご紹介をお願いする次第です。
  • 私が申し上げるのもおこがましいのですが、もう一度だけチャンスをいただけませんでしょうか。

2. 意見・提案をするとき

会議などで、役職が上の人に対して自分の意見を述べたいときに非常に有効です。

  • おこがましいとは存じますが、その企画は一度再検討する必要があるかと存じます。
  • おこがましいようですが、別のアプローチも考えられるのではないでしょうか。
  • 私が言うのもおこがましいですが、一点だけ懸念がございます。
  • おこがましい意見で恐縮ですが、若手からの視点として聞いていただけますと幸いです。

3. 誤りの指摘・反論をするとき

相手のミスを指摘したり、意見に反対したりする際に、相手の面子を保ちながら伝えるためのクッション言葉になります。

  • おこがましいとは存じますが、この見積書の〇〇の項目は、誤りではないかと拝察いたします。
  • 部長のご意見を否定するようで大変おこがましいのですが、私はその点について少し異なる見解を持っております。
  • おこがましいことを申しますが、そのデータは最新のものではない可能性がございます。

4. 感謝を伝えるとき

自分の「おこがましい」お願いや意見を聞き入れてくれたことに対し、深い感謝と謙虚な気持ちを表現できます。

  • おこがましいお願いにもかかわらず、快くご対応いただき心より感謝申し上げます。
  • おこがましい意見に耳を傾けていただき、誠にありがとうございました。
  • あのようなおこがましい態度をとってしまったにもかかわらず、ご寛恕いただき痛み入ります。

5. メール・手紙での使い方 ✉️

メールや手紙などの書き言葉でも同様に使えます。文頭に置くことで、丁寧な印象を与えることができます。

  • 件名:【〇〇(自分の名前)】おこがましいお願いで恐縮です
  • おこがましいお願いとは存じますが、添付の資料をご確認の上、ご意見を賜れますと幸いです。
  • おこがましいとは存じますが、本メールにて〇〇のお願いをさせていただきたく、ご連絡いたしました。

【超重要】「おこがましいのですが…」と言われたときの返し方

もしあなたが相手から「おこがましいのですが…」と言われた場合、その返答は非常に重要です。ここで「はい、そうですね」などと同意してしまうと、「あなたの発言は確かに身の程知らずですね」と認めることになり、大変失礼にあたります。

相手の謙遜をやんわりと否定し、受け入れる姿勢を示すのが正しいマナーです。

正しい返答例

  • とんでもないです。どうぞ、お聞かせください。」
  • いえいえ、そんなことはございませんよ。ぜひご意見を伺いたいです。」
  • 滅相もございません。どのようなことでしょうか。」

この一連のやり取りは、日本のコミュニケーションにおける礼儀作法の一つです。相手の謙遜を上手に受け止めることで、良好な人間関係を築くことができます。

【違いが一目瞭然】「おこがましい」の類語・言い換え表現

「おこがましい」には似た言葉がいくつかあり、使い分けに迷うことがあります。ニュアンスの違いをしっかり理解しておきましょう。

言葉中核的な意味使う対象丁寧度主な場面
おこがましい身分不相応(身の程知らず)自分中~高目上への意見・依頼
差し出がましい不必要な干渉(おせっかい)自分・他人助言・手助けの申し出
厚かましい無遠慮、図々しい(恥知らず)自分・他人負担の大きい依頼、他者批判
僭越(せんえつ)地位を超えた役割遂行自分スピーチや挨拶など公式な場

「差し出がましい」との違い

「差し出がましい」 は、頼まれてもいないのに口や手を出すこと、つまり「おせっかい」というニュアンスです。「身分」よりも「役割」を越えるイメージです。

  • おこがましい: 私のような立場の者が言うべきではないが…
  • 差し出がましい: 私が出る幕ではないかもしれないが…

「厚かましい」との違い

「厚かましい」 は、遠慮や慎みがない「図々しい」という意味で、より直接的でネガティブな言葉です。相手への配慮の欠如を非難するニュアンスが強く、自分に使うとかなり卑下した表現になります。他者批判にも使われます。

  • おこがましいお願い(身分不相応なお願い)
  • 厚かましいお願い(図々しく、非常識なお願い)

「僭越(せんえつ)ながら」との違い

「僭越」 は「おこがましい」よりも硬く、改まった表現です。スピーチの冒頭や会議の議長役を引き受ける際など、特定の「大役」を担う前置きとして定型的に使われます。

  • おこがましい:特定の「発言」や「お願い」に対して使う。
  • 僭越ながら:スピーチや乾杯の音頭など、ある程度の時間続く「役割」に対して使う。

⚠️注意!「おこがましい」の間違った使い方・NG例

便利な言葉ですが、使い方を誤ると人間関係を損なう危険もあります。以下の点に注意しましょう。

  • NG①:他人に対して使う「〇〇さんの発言はおこがましいですよ」のように他人を批判して使うと、「生意気で身の程知らずだ」という非常に強い侮辱になります。上司が部下を諫める際に使うこともありますが、基本的には自分を主語にして使う言葉だと心得ましょう。
  • NG②:使いすぎる一回の会話やメールで何度も使うと、かえって自信がなく、卑屈な印象を与えてしまいます。「また言ってる…」と思われないよう、ここぞという場面で一度だけ使うのが効果的です。
  • NG③:明らかに立場が上の人が使う社長が新入社員に「私が言うのもおこがましいけど…」などと言うと、皮肉や嫌味に聞こえる可能性があります。状況によっては相手を萎縮させてしまうため、注意が必要です。

「おこがましい」の対義語は?

「おこがましい」に一言で対応する完璧な対義語はありませんが、その反対の概念を表す言葉はあります。

  • 謙虚(けんきょ): 最も分かりやすい対義語です。控えめで素直な態度のことを指します。
  • 分(ぶん)をわきまえる: 自分の立場や能力を理解し、それにふさわしい言動をすることを意味します。「おこがましい」は、まさに「分をわきまえない」状態です。

「おこがましい」の英語表現は?

「おこがましい」の持つ「身の程知らず」というニュアンスを英語で表現する場合、以下のような言葉が使えます。

  • presumptuous最も一般的で近い表現です。「(権限などがないのに)出しゃばりな、生意気な」という意味を持ちます。
    • It would be presumptuous of me to comment on your work. (あなたの仕事についてコメントするのはおこがましいことです。)
  • I know it's not my place, but...「私の立場ではないとは承知ですが…」というフレーズも、「おこがましいのですが」のニュアンスをうまく伝えられます。

まとめ

「おこがましい」は、日本のコミュニケーション文化における「謙遜」と「配慮」を体現した、奥深い言葉です。

  • 意味: 「身の程知らずで、出過ぎている」
  • 使い方: 目上の人に意見や依頼をするときのクッション言葉として使う。
  • ポイント: 主語は自分。他人に使うと強い非難になる。
  • 言われたら: 「とんでもないです」 とやんわり否定するのがマナー。

この言葉を正しく使いこなすことは、単に語彙が豊富であることの証明ではなく、あなたが社会的知性を持ち、相手を尊重できる人物であることの証となります。

今日からぜひ、適切な場面で自信を持って「おこがましい」を使ってみてください。きっと、あなたのコミュニケーションがより円滑で、洗練されたものになるはずです。

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