経営者の考え方!成功するリーダーに共通する11の思考法

企業の成長は、経営者の「考え方」一つで決まると言っても過言ではありません。変化の激しい現代において、優れた経営者はどのような思考法で意思決定を行い、組織を導いているのでしょうか?

この記事では、企業の盛衰を分ける「経営者の考え方」の本質を徹底的に解剖します。

成功する経営者に共通するマインドセットスキルから、その根底にある経営哲学、さらには稲盛和夫氏やスティーブ・ジョブズ氏といった偉大な経営者の思考まで、網羅的に解説します。

成功する経営者に共通する「考え方」の全体像

詳細に入る前に、本記事で解説する「成功する経営者の考え方」の全体像を一覧でご紹介します。これらは、単なる個別のスキルではなく、互いに影響し合う一つの生態系(エコシステム)として機能します。

精神的土台となる「4つのマインドセット」

  1. 究極の当事者意識:「すべては自分の責任」と捉える
  2. 顧客価値への執着:すべての思考を顧客から始める
  3. 失敗からの学習能力:失敗を「未来への投資」と定義する
  4. 折れない心:ポジティブ思考とレジリエンスで未来を切り拓く

成果を生み出す「3つの必須スキル」

  1. 意思決定能力:企業の未来を決める「決断」の技術
  2. 戦略的思考力:現在から未来を見通す力
  3. ヒューマンスキル:組織のポテンシャルを解放する力

すべての源泉となる「4つの原理原則」

  1. 経営哲学の確立:企業の魂を言語化する
  2. ビジョンの提示:組織を動かす「未来の地図」
  3. ミッションの定義:企業が果たすべき「使命」
  4. 一貫した価値観(バリュー):日々の行動の指針

【マインドセット編】経営のOSとなる4つの考え方

ここでは、日々の判断や行動の土台となる、経営者の中核的な精神的態度(マインドセット)を解説します。

① 究極の当事者意識:「すべては自分の責任」と考える

成功する経営者の根底には、「すべては自己責任である」という強烈な当事者意識があります。事業で起こるあらゆる問題や結果を、景気や他人のせいにせず、すべて自分自身の責任として捉える姿勢です。

  • 問題解決の起点になる:「自分の責任」と捉えることで、他責にして思考停止するのではなく、「では、自分に何ができるか?」と即座に解決策を探し始められます。
  • 組織が強くなる:リーダーがこの姿勢を示すことで、従業員にも責任感が伝播し、組織全体の生産性が向上します。
  • 挑戦する文化が生まれる:経営者が自らの非を認める文化は、従業員が失敗を恐れずに挑戦する土壌を育みます。

② 顧客価値創造への執着:すべての思考は顧客から始まる

企業の目的は「顧客の創造」である、とドラッカーは言いました。成功する経営者は、常に**「どうすれば顧客に最高の価値を提供できるか?」**を思考の中心に置いています。

重要なのは、製品の機能(機能的価値)だけでなく、顧客が体験するプロセス全体での満足感(情緒的価値・体験価値)までを考えることです。スターバックスがコーヒーではなく「第三の場所(サードプレイス)」という体験価値を提供したのが典型例です。

③ 失敗からの学習能力:失敗は「コスト」ではなく「投資」

多くの組織でタブー視される「失敗」を、優れた経営者は**「成功確率を高めるための貴重なデータ」**と捉えます。

特にイノベーションが求められる現代では、「早く失敗し、早く学ぶ(Fail Fast)」という考え方が不可欠です。挑戦した結果の失敗は、次に繋がる学びをもたらす「善」であり、未来への投資なのです。失敗を隠蔽することこそが、組織にとって最大の損失となります。

④ ポジティブ思考とレジリエンス:折れない心で未来を切り拓く

経営は困難の連続です。予期せぬトラブルに直面した際、悲観論に陥るのではなく、**「どうすればできるか?」**を常に問い続け、チームを鼓舞するポジティブな思考が求められます。

この思考を支えるのが、**レジリエンス(精神的回復力)**です。失敗や強烈なプレッシャーに直面しても心が折れることなく、その経験から学び、再び立ち上がる強靭な精神力こそ、リーダーに必須の能力です。

【スキル編】経営を駆動させる3つの必須能力

強固なマインドセットを具体的な成果に結びつけるための、思考技術と対人能力を解説します。

⑤ 意思決定能力:企業の未来を左右する決断の技術

経営者の仕事は「決断すること」に集約されます。優れた経営者は、決断の質とスピードを最大化する思考のフレームワークを持っています。

  • 2つの判断基準:売上や利益といった客観的な**「論理的基準(数字)」と、モラルや信頼といった「非論理的基準(見えない価値)」**をバランス良く統合して判断します。
  • 強力な思考法:**「その決断は元に戻せる(可逆)か、戻せない(不可逆)か?」**と自問します。元に戻せる判断はスピード重視で試し、元に戻せない重大な判断は慎重に検討することで、思考のリソースを最適に配分します。

⑥ 戦略的思考能力:現在から未来を見通す力

日々の業務に埋没せず、会社の未来を正しく描く能力です。以下の3つの力で構成されます。

  • 先見性と洞察力:世の中の大きな変化を読み解き(先見性)、物事の裏に隠された本質を見抜く力(洞察力)。
  • 俯瞰的思考:物事を鳥の視点で捉え、短期的・部分的な視点ではなく、長期的・全体的な視点で考える力。
  • 論理的思考力(ロジカルシンキング):物事の因果関係を正確に捉え、筋道を立てて考える力。複雑な問題を整理し、最短で解決策に導きます。

⑦ ヒューマンスキル:組織のポテンシャルを解放する力

どれほど優れた戦略も、実行するのは「人」です。組織全体の力を最大限に引き出す対人能力が不可欠です。

  • リーダーシップ:進むべき方向を示し、チームを牽引する力。
  • コミュニケーション能力:考えを伝えるだけでなく、相手の意見に耳を傾け、合意を形成する力。
  • コーチング・人材育成能力:メンバーの成長を支援し、能力を引き出す力。
  • 求心力・影響力:その人柄やビジョンで「この人のために頑張りたい」と思わせる力。

これらの土台として、歴史や哲学、芸術といった幅広い**「教養」**が、人間理解を深め、判断に深みを与えます。

【土台編】すべての「考え方」の基盤となる経営哲学

なぜ、あなたの会社は存在するのか? この根源的な問いへの答えこそが「経営哲学」であり、すべての思考と判断の源泉となります。

なぜ経営哲学が重要なのか?

経営哲学(企業理念)は、単なるスローガンではありません。企業の存続と成長を左右する、極めて戦略的な無形資産です。

  • 防御機能(羅針盤):判断に迷った時や、危機に直面した時に立ち返るべき「ブレない軸」となり、誤った判断から組織を守ります。
  • 攻撃機能(エンジン):進むべき方向を明確にし、チームを鼓舞します。また、理念に共感する優秀な人材や顧客を惹きつけ、事業成長を加速させます。

ビジョン(未来像)とミッション(使命)を明確にする

哲学という抽象的な概念を、具体的な行動に落とし込む道標が**ビジョン(我々はどこへ向かうのか)ミッション(我々は何を成すのか)**です。

経営者の最も重要な責務は、このビジョンとミッションを力強い言葉で語り、組織を導くことです。採用、評価、事業判断など、あらゆる経営活動の判断基準をこの理念と一貫させることで、初めて組織文化として深く根付きます。

【実践編】偉大な経営者たちの考え方から学ぶ

ここでは、3名の偉大な経営者の思考様式が、どのように事業の成功に結びついたのかを探ります。

稲盛和夫氏:「人間として何が正しいか」

京セラやKDDIを創業した稲盛氏の哲学の核心は、**「人間として何が正しいか」**という普遍的な倫理観です。「動機善なりや、私心なかりしか」という自問自答は、利益よりも動機の正しさを問う姿勢の象徴です。この哲学を「アメーバ経営」という具体的な手法に落とし込み、全従業員に経営者意識を植え付けました。

松下幸之助氏:「企業は社会の公器である」

「経営の神様」と称される松下氏の思想の中心は、**「企業は社会からの預かり物である」**という考え方です。これにより、経営者は社会全体の利益を考える「公人」として、力強い判断を下せると説きました。「物をつくる前に、人をつくる」という言葉の通り、社員を社会人として育てることを企業の重要な使命と位置づけました。

スティーブ・ジョブズ氏:「Stay hungry, Stay foolish.」

Appleの創業者であるジョブズ氏の思考は、**「ハングリーであれ、愚か者であれ」**という言葉に凝縮されています。現状に満足せず、常識を疑い、イノベーションこそがリーダーとフォロワーを分ける唯一の基準だと考えました。テクノロジーとリベラルアーツを融合させ、人間の感性に訴える「シンプルさ」と「美しさ」を徹底的に追求しました。

【応用編】事業ステージで変わる経営者の考え方

求められる「考え方」は、企業のステージによっても変化します。ここではスタートアップと大企業の経営者の思考の違いを解説します。

比較項目スタートアップ経営者大企業経営者
主要目標急成長と新市場の創造持続的成長と事業の安定
意思決定スピード重視(即時・迅速)プロセス重視(慎重・合議)
リスク許容度高い(失敗は学習データ)低い(リスクは回避対象)
直面する課題生存、資金調達イノベーションのジレンマ

どちらが優れているという訳ではなく、自社の置かれた状況(コンテクスト)に合わせて、思考様式を意図的に選択・変革していく柔軟性が経営者には求められます。

特に大企業が陥りがちな**「イノベーションのジレンマ」**の根本原因は、既存事業の成功体験によって、経営者の「判断基準」が硬直化してしまうことにあります。これを克服するには、既存事業を評価するのとは全く別の、「新しい判断基準」を意図的に設定し、使い分ける高度な思考の柔軟性が必要です。

まとめ:明日から実践!経営者の考え方を身につける5つの習慣

卓越した経営者の思考様式は、才能ではなく、日々の意識的な実践によって後天的に獲得できる「技術」です。明日から始められる5つのアクションプランを提案します。

  1. 自分の哲学を言語化する:「自分は何のためにこの事業を行うのか?」を文章に書き出し、すべての判断の「軸」とする。
  2. 思考の癖を変える:問題が起きたら「誰のせいか?」ではなく「自分に何ができるか?」から考え始める訓練をする。
  3. 失敗ログをつける:失敗した事柄と「そこから得た学び」「次に試すこと」をセットで記録し、失敗をポジティブな資産に変える。
  4. 意思決定を訓練する:日常の小さな判断で「この決断は元に戻せるか?」と自問し、重要な決断に集中する感覚を養う。
  5. 異分野から学ぶ:専門外の本を読んだり、異なる業界の人と会ったりして、意図的に視野を広げ、思考の硬直化を防ぐ。

優れた経営者への道は、自らの思考様式を絶えず客観視し、学び、磨き続ける終わりのない旅です。この記事が、その旅の信頼できる羅針盤となることを願っています。

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