誹謗中傷する人の心理とは?加害者の10の特徴を考察

インターネットが普及した現代社会で、誰もが加害者にも被害者にもなりうる「誹謗中傷」。

「なぜ、あの人はあんな酷いことを言えるのだろう?」 「誹謗中傷する人って、一体どんな心理なの?」

この記事では、そんな疑問に答えるため、誹謗中傷の深層心理を専門的な知見から徹底的に解き明かします。

加害者の心理的動機から、ネット特有の集団心理、そして被害者が受ける心の傷と具体的な対処法まで、網羅的に解説します。

第1章:なぜ人は誹謗中傷をしてしまうのか?根底にある4つの心理

誹謗中傷という攻撃的な行動の裏には、加害者が抱える複雑な心理が隠されています。多くの場合、その根源は個人的な欠乏感にあります。

① 劣等感と嫉妬心

自分に自信が持てず、強い劣等感を抱えている人は、他者の成功や幸福を素直に喜べません。自分より優れていると感じる相手の欠点を探し出して攻撃することで、一時的に自分の優位性を感じ、心のバランスを保とうとします。これは、低い自己肯定感の裏返しなのです。

② ストレスと欲求不満のはけ口

日常生活で溜まったストレスや満たされない欲求のはけ口として、誹謗中傷が行われるケースも非常に多いです。現実世界では言えないような攻撃的な感情を、匿名性の高いインターネット空間で、無関係な他者にぶつけることで解消しようとします。

③ 歪んだ正義感

加害者の多くは、自身の行為を「誹謗中傷」だと思っていません。むしろ、「間違っている社会を正す」「ルール違反者を罰する」といった、歪んだ正義感に駆られています。この「正義」が、攻撃性を正当化し、罪悪感を麻痺させてしまうのです。コロナ禍の「自粛警察」などが典型例です。

④ 優越感への渇望

「自分は常に正しい」「他者より優位に立ちたい」という強い欲求も、誹謗中傷の引き金になります。相手を論破したり、欠点を指摘したりすることで、自尊心を満たし、優越感に浸ろうとします

これらの心理は、加害者に一時的な満足感を与えるかもしれませんが、根本的な自己肯定感の向上にはつながりません。むしろ、攻撃を繰り返すことで、さらなる自己嫌悪に陥るという悪循環を生み出します。

第2章:要注意!誹謗中傷をしやすい人の10の特徴

誹謗中傷に走りやすい人には、いくつかの共通したパーソナリティ特性が見られます。特に心理学で「ダークトライアド」と呼ばれる3つの特性は、オンラインでの攻撃行動と強い関連があることが指摘されています。

  1. 自己肯定感が極端に低い: 他者を見下すことでしか自尊心を保てない。
  2. 嫉妬深い: 他人の成功や幸せが許せない。
  3. 強い劣等感がある: 常に自分と他人を比較している。
  4. ナルシシスト(自己愛が強い): 自分は特別だと思い込み、少しでも批判されると激しく攻撃する。
  5. マキャベリスト: 目的のためなら平気で他人を利用し、嘘をつく。
  6. サイコパス傾向がある: 他人の痛みに共感できず、罪悪感を感じない。
  7. サディスティック(加虐性): 他人が苦しむのを見て喜ぶ傾向がある。
  8. ストレスを溜め込みやすい: 上手なストレス発散方法を知らない。
  9. 現実世界で孤立している: 社会的なつながりが希薄で、不満を抱えている。
  10. 「自分は正しい」と信じて疑わない: 自分の価値観が絶対だと思い込み、異なる意見を排除しようとする。

これらの特徴を持つ人が、次の章で解説するインターネットの特殊な環境と結びついたとき、誹謗中傷のリスクは一気に高まります。

第3章:なぜネットでは攻撃が加速する?誹謗中傷を増幅させる3つの集団心理

個人の攻撃性が、なぜネット上では大規模な「炎上」にまで発展するのでしょうか。それには、デジタル環境特有の強力な社会心理学的なメカニズムが働いています。

① 匿名性がもたらす「オンライン脱抑制効果」

ネット上では、現実世界での社会的抑制が外れ、普段はしないような大胆な行動を取ってしまう「オンライン脱抑制効果」が働きます。

  • 匿名性: 「どうせバレない」という感覚が責任感を麻痺させる。
  • 不可視性: 相手の顔が見えないため、感情への共感が薄れる。
  • 非同期性: 「言い逃げ」ができるため、言葉の影響を実感しにくい。

これらの要因が重なり、攻撃的な言動へのハードルが劇的に下がってしまうのです。

② 閉鎖空間が生む「エコーチェンバー効果」

SNSのアルゴリズムは、私たちが見たい情報や、自分と似た意見ばかりを表示する傾向があります。その結果、同じ考えを持つ人々だけの閉鎖的なコミュニティ(エコーチェンバー)が生まれます。

この空間では、反対意見は排除され、仲間内の意見だけが何度も共有されることで、当初は些細な不満だったものが、次第に過激な確信へと増幅されていきます。これが「炎上」の火種となります。

③ 群衆心理が生む「没個性化」と「同調圧力」

「炎上」のような群衆の中にいると、個人は「自分」という意識を失い、匿名の集団の一部であるかのように感じ始めます(没個性化)。

さらに、「みんながやっているから自分もやっていいだろう」という**バンドワゴン効果(同調圧力)**が働き、攻撃への参加者が雪だるま式に増加します。この時、一人ひとりの罪悪感は希薄になっています。

第4章:それは「言葉の暴力」。誹謗中傷が被害者の心に与える深刻な影響

誹謗中傷は、単なる悪口ではありません。被害者の心と体に、消えない傷跡を残す深刻な暴力です。

精神疾患のリスク

誹謗中傷の被害者は、**うつ病、不安障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)**を発症するリスクが著しく高いことが、数多くの研究で示されています。最悪の場合、自殺念慮や自殺行動につながることもあります。

オンライン・トラウマの特異性

ネットいじめがもたらす心の傷は、従来のいじめとは異なる特有の苦しみがあります。

  • 不可避性: スマートフォンを通じて、24時間365日、自宅などのプライベートな空間にまで攻撃が侵入してくる。「逃げ場がない」という感覚に苛まれます。
  • 永続性: 一度ネットに投稿された情報は完全に消すことが難しく、何年にもわたって拡散され続ける恐怖が続きます。
  • 拡散性: 見知らぬ不特定多数の人々に晒されるという、強烈な羞恥心と孤立感をもたらします。

これらの要因により、被害者の自己肯定感は崩壊し、深刻な対人恐怖や無力感に陥ってしまうのです。

第5章:【重要】もしも被害に遭ったら?自分を守るための具体的な対処法と相談窓口

もしあなたが誹謗中傷の被害に遭ってしまったら、一人で抱え込まず、冷静に、そして迅速に行動することが何よりも重要です。

ステップ1:すぐにやるべきこと(自己防衛)

  1. 証拠を保全する: 投稿内容、URL、日時がわかるようにスクリーンショットを撮って保存しましょう。これが後々の法的措置で最も重要な証拠になります。
  2. 相手に反応しない: 加害者に直接反論するのは逆効果です。事態を悪化させる可能性が高いため、絶対にやめましょう。
  3. プラットフォームの機能を活用する: ブロック、ミュート、通報機能を使い、加害者との接触を断ち、運営会社に規約違反を報告してください。

ステップ2:専門機関に相談する

誹謗中傷は、あなた一人の力で解決するのが難しい問題です。ためらわずに専門家の力を借りましょう。

機関名主なサービス内容
違法・有害情報相談センター総務省支援。削除依頼の方法などをアドバイス。
人権相談窓口(法務省)人権侵害として相談。法務局から削除要請も可能。
誹謗中傷ホットライン国内外の事業者に利用規約に沿った対応を要請。
都道府県警察サイバー犯罪相談窓口脅迫など、犯罪の可能性がある場合に相談。

ステップ3:自分の心を守る(心理的ケア)

何よりも大切なのは、あなた自身の心を守ることです。

  • 専門家を頼る: 精神的な苦痛が続く場合は、カウンセラーや心療内科に相談しましょう。誹謗中傷による心の傷の治療には、**認知行動療法(CBT)**などが有効とされています。
  • 信頼できる人に話す: 信頼できる家族や友人に、今の気持ちを話すだけでも心は軽くなります。
  • SNSから離れる: 一時的にSNSのアカウントを非公開にしたり、アプリを削除したりして、心休まる時間を作りましょう。

一人で抱え込まないでください。 あなたは決して一人ではありません。下記の窓口では、チャットで気軽に悩みを相談できます。

  • あなたのいばしょ: 24時間365日対応の無料・匿名チャット相談。
  • こころのほっとチャット: LINEやWebで専門家に相談できる。

結論:心理的に健全なデジタル社会を目指して

誹謗中傷は、個人の心の弱さ、ネット特有の集団心理、そしてテクノロジーの設計が複雑に絡み合って生まれる社会問題です。

この問題に対処するには、法整備やプラットフォーム事業者の対策はもちろんのこと、私たち一人ひとりがデジタル空間における想像力と思いやりの心を持つことが不可欠です。

この記事が、誹謗中傷の心理への理解を深め、被害に苦しむ人々が少しでも減るための一助となれば幸いです。

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